「AIエージェントに仕事を任せる」と言っても、実際にやってみると、1人のAIに何でも頼むやり方はすぐに限界が来ます。前回の記事では、AIカンパニーを部署制にした経緯を簡単に紹介しました。今回は、実際にどうやって部署を切り分けたのか、それぞれにどんな権限を持たせているのか、そして秘書役を置いた理由まで、もう少し具体的に踏み込んで記録します。
前回の記事で、「1人のAIに全部やらせる」のではなく、業務内容ごとに部署を作ったという話をしました。今回はその中身、つまり「部署をどういう基準で分けたのか」「各部署にどこまでの権限を渡しているのか」を具体的に紹介します。これからAIエージェントを使って何かを自動化したい、複数のタスクを整理して任せたいと考えている方の参考になればと思います。
📖 この記事の目次
1. 「1人のAIに全部やらせる」ではなく部署分けした理由
最初にやっていたのは、1つのチャットに「これも」「あれも」と次々にタスクを積み重ねていくやり方でした。リサーチを頼んだ流れでそのまま記事執筆を頼み、ついでにSNS投稿文も、というように、会話の中に性質の違う仕事が混ざっていきます。
これがある程度までは問題なく動くのですが、タスクが増えてくると次のような不具合が出てきました。
- 「さっきのリサーチの続きを」といった過去の文脈の呼び出しが曖昧になる
- 記事執筆用の文体指示と、SNS用の短文指示が混ざり、アウトプットの精度が落ちる
- 「今どこまで進んでいるか」が1つの会話の中に埋もれてしまい、後から追いにくい
人間の組織に例えると、経理も営業も広報もぜんぶ同じ人に振っているような状態です。これでは業務が積み上がるほど破綻しやすくなります。そこで、業務の性質ごとに担当を分け、それぞれに専用の作業領域(フォルダ)と役割定義を与える「部署制」に切り替えました。
2. 各部署の役割定義(CLAUDE.mdでの権限・業務範囲の切り方)
AIカンパニーでは現在、次の4部署を稼働させています。
- リサーチ部: 市場調査、競合分析、レポート作成
- コンテンツ制作部: ブログ・note記事、電子書籍などの執筆(このブログの記事もここが担当)
- マーケティング部: SNS投稿文、広告コピー、LP文案
- 開発部: プログラミング代行、ツール・自動化スクリプトの開発
部署ごとに専用のフォルダを用意し、その中に「CLAUDE.md」という設定ファイルを置いています。これは、その部署のAIエージェントが常に読み込む”就業規則”のようなものです。中身には、おおむね次のような項目を書いています。
- 役割: この部署は何をする部署か(一文で明確に定義する)
- 業務範囲: 具体的にどんな作業を担当するか。主軸業務と、依頼があったときだけ対応する副次業務を分けて明記する
- 成果物の納品先: どのフォルダに、どんな形式で保存するか
- 品質基準: 事実確認が必要な内容には根拠を明記する、指定されたトーン・文字数に従う、といった最低限守るべき基準
ポイントは、権限と業務範囲を「その部署のAIエージェントが読めば分かる形」で明文化していることです。曖昧な言葉ではなく、「主軸業務はこれ、副次業務はこれ」「対外発信を伴うものは下書きまで」というように、判断基準そのものを文章として渡しておくと、指示のたびに一から説明し直す必要がなくなります。CLAUDE.mdの具体的な書き方・工夫については、次回の記事でさらに掘り下げます。
3. 秘書役を置いた狙い(タスクの振り分け・進捗管理)
部署を分けても、「どの依頼をどの部署に振るか」を毎回自分で判断するのは、それはそれで手間がかかります。そこで、社長からの依頼を最初に受け取り、内容を見て適切な部署に振り分ける「秘書役」のAIエージェントを置いています。
秘書の役割は、実際の会社の総務・アシスタント業務に近い形で定義しています。
- 依頼内容を読み、どの部署の担当かを判断する(複数部署にまたがる場合はタスクを分割する)
- 該当部署のCLAUDE.mdを確認し、業務範囲・品質基準を把握したうえで仕事を委任する
- 部署からの成果物を確認し、簡単な品質チェックをしたうえで社長に報告する
- タスクログに依頼内容・担当部署・状況・完了日を記録し、履歴を残す
- 部署の役割を超える判断(新規事業の可否、契約、支出、対外公開の実行など)は、必ず社長に確認してから進める
この仕組みにしてから、社長側は「秘書に頼む」という1つの入口だけを意識すればよくなりました。どの部署にどう振るか、進捗をどう追うかという運用の細かい部分は、秘書役と各部署のCLAUDE.mdに委ねる形です。人手を増やさずに窓口を一本化できる、という点は、AIエージェントを使った運用ならではのメリットだと感じています。
4. 実際に運用してみて見えた課題
ここまで、うまくいっている面を中心に書いてきましたが、実際に運用してみると、当然ながらうまくいかない部分も出てきています。正直に記録しておきます。
部署の境界線があいまいなタスクが出てくる。
例えば「note事業の企画書を作る」という依頼は、リサーチ的な要素(市場調査)とコンテンツ制作的な要素(原稿執筆)の両方を含みます。こうしたタスクは、秘書がその都度「どこまでをどの部署に振るか」を判断する必要があり、完全に自動化しきれていません。今のところは、秘書が主担当部署を決めたうえで、必要に応じて複数部署に分割して依頼する運用でカバーしています。
成果物のトーン・文体を部署間で揃えるのに調整が要る。
コンテンツ制作部が書いた文章と、マーケティング部が書くSNS用の短文とで、微妙にトーンがずれることがあります。これは、CLAUDE.mdに「参照すべき既存記事」を指定するなど、部署をまたいだ一貫性を保つ工夫を都度追加している段階です。
進捗管理は、まだ人(社長)による最終確認に依存している。
タスクログには記録が残るものの、「本当に品質基準を満たしているか」の最終判断は、今のところ社長が都度確認する形を崩していません。これは前回の記事で触れた「対外発信は必ず承認を経る」というルールとも関係していて、意図的にそうしている部分でもあります。
5. まとめ:これから部署を増やす予定
今回は、AIカンパニーの部署をどういう基準で分けたか、CLAUDE.mdでの役割定義の書き方、秘書役を置いた狙い、そして実際に運用してみて見えてきた課題について紹介しました。
現状の4部署(リサーチ部・コンテンツ制作部・マーケティング部・開発部)は、事業が広がるにつれて増えていく想定です。例えば、SNSアカウント運用が本格化すれば運用専任の体制が必要になりますし、ブログ・note事業の規模が大きくなれば、進行管理だけを担う役割が必要になるかもしれません。そのあたりも、実際に必要になったタイミングで、また記録としてこのブログに残していく予定です。
次回は、各部署のAIエージェントが実際に読み込んでいるCLAUDE.mdの中身と、「守らせたいルールをどう書けばAIがちゃんと守るのか」という具体的な工夫について紹介します。会社を立ち上げた経緯やこのシリーズの読み方については、第1回の記事「なぜ社長1人・AI社員多数で『会社』を作ったのか」もあわせてご覧ください。


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