AIエージェントに仕事を任せるうえで、地味だけれど一番効いていると感じるのが「設定ファイルの書き方」です。AIカンパニーでは、各部署のAIエージェントに「CLAUDE.md」という設定ファイルを読み込ませ、役割やルールを守らせています。今回は、このCLAUDE.mdに実際何を書いているのか、どう工夫すると指示が機能しやすいのかを、うまくいった例・いかなかった例も含めて紹介します。
前回の記事で、AIカンパニーの部署ごとにCLAUDE.mdという設定ファイルを置いていると紹介しました。今回はその中身にもう一段踏み込んで、「AIに何かを”守らせる”にはどう書けばいいのか」という、実務的な工夫の話をします。プロンプト設計・業務効率化に関心のある方の参考になればと思います。
📖 この記事の目次
1. CLAUDE.mdとは何か(簡単な前提説明)
CLAUDE.mdは、Claudeのエージェント機能がフォルダを開いたときに自動的に読み込む、いわば「そのフォルダで働くうえでの前提知識・ルールを書いたファイル」です。人間の組織における就業規則や業務マニュアルに近い役割だと考えるとイメージしやすいと思います。
AIカンパニーでは、会社全体の共通ルールを定義した「全社共通のCLAUDE.md」を最上位に置き、その下に各部署専用のCLAUDE.mdを配置する、という階層構造にしています。
- 全社共通CLAUDE.md: 会社のミッション、組織構成、秘書としての振る舞い、全社共通ルール(対外発信は承認を経る、等)を記載
- 各部署のCLAUDE.md: その部署固有の役割、業務範囲、成果物の納品先、品質基準を記載
AIエージェントに一言「これをやって」と頼むだけでも動きますが、「そもそもこの会社・この部署は何をする場所で、何を守るべきか」という前提が事前に共有されているかどうかで、アウトプットの安定感がまったく違います。毎回の指示の中に前提を書き込む必要がなくなる、という意味でも効率化になっています。
2. 「対外発信は承認を経る」等、守らせたいルールの書き方
CLAUDE.mdを書き始めた当初、「対外的な発信は慎重に」というような曖昧な書き方をしていた時期がありました。ですが、これだと実際の運用でルールが徹底されないことがありました。今は、次のような書き方を意識しています。
曖昧な書き方(うまく機能しなかった例)
対外的な発信は慎重に行うこと。
具体的な書き方(実際に使っている例)
対外的な発信を伴う成果物(SNS投稿、顧客対応、契約書送付など)は、ドラフト作成までをAIの役割とし、実際の発信・送信は社長の承認を経てから行う。
ポイントは、「何が対象か」「どこまでがAIの役割で、どこからが人間の役割か」を具体的な名詞・動詞で区切ることです。「慎重に」「適切に」といった抽象的な副詞は、AIにとっても人間にとっても解釈の余地が大きすぎて、結果として守られないルールになりがちだと感じています。
同様に、「新規事業の可否・契約・支出といった経営判断はAIが勝手に決めない」「成果物は必ず所定のフォルダに保存し、履歴を残す」といったルールも、対象範囲と行動の境界線をできるだけ具体的に書くようにしています。
3. 部署ごとのCLAUDE.mdをどう分けているか
部署ごとのCLAUDE.mdは、おおむね次の構成で統一しています。フォーマットを揃えておくことで、部署が増えたときにも同じ型で追加できるようにしています。
- 役割: 一文でその部署の存在意義を定義する
- 業務範囲: 主軸業務(会社の収益に直結する仕事)と、副次業務(依頼があったときだけ対応する仕事)を分けて列挙する
- 成果物: 納品先フォルダと形式(Markdown等)を明記する
- 品質基準: 事実確認の要否、トーン・文字数などの指定に従う旨を明記する
- タスク管理: 進捗記録をどこに、どう残すかを明記する
例えば、コンテンツ制作部のCLAUDE.mdでは、主軸業務として「販売用note記事・電子書籍の企画・執筆」「アフィリエイト型ブログの記事執筆」を挙げる一方、副次業務として「社長の既存事業に関する記事執筆(依頼があったときのみ)」を明記し、両者を混同しないようにしています。この線引きがあることで、「今回の依頼は主軸か副次か」をAI自身が判断しやすくなり、結果として社長側の説明コストも減っています。
4. うまく機能した指示・機能しなかった指示
ここまで良い面を中心に書いてきましたが、実際にはうまくいかなかった指示もあります。両方を正直に記録しておきます。
うまく機能した指示
- 「成果物は必ず所定のフォルダに保存し、履歴を残す」というルール。これはシンプルながら徹底されやすく、後から「あの依頼はどうなったか」を追跡できる状態を保てています。
- 「対外発信はドラフトまで、公開はAIが行わない」というルール。これは複数の部署・複数の記事にまたがって一貫して守られており、今回のこのブログ記事も下書きの状態でまず社長が確認する、という手順を踏んでいます。
- 部署の役割定義に「主軸/副次」の区分を入れたこと。依頼の性質判断がしやすくなりました。
うまく機能しなかった指示(工夫の余地がある部分)
- 「トーンを統一すること」という抽象的な指示だけでは、部署をまたいだ文章のトーンが微妙にずれることがありました。今は「参照すべき既存記事」を具体的に指定するなど、抽象的な指示を”参照できる実例”に置き換える形に修正しています。
- 「必要に応じて確認すること」という条件付きの指示は、AIが「これは確認が必要なケースか」を毎回自己判断する必要があり、判断がぶれることがありました。可能な限り、確認が必要な条件そのものを列挙する形に書き直しています。
総じて、「どう振る舞ってほしいか」を副詞や形容詞で伝えるのではなく、対象・条件・行動を名詞と動詞で具体的に書くほど、指示が安定して機能するという傾向を感じています。
5. まとめ:ルール設計は「性善説で書かない」のがコツ
今回は、AIカンパニーで実際に使っているCLAUDE.mdの構成と、ルールの書き方の工夫について紹介しました。最後に、ここまでの経験から言えるコツを一つ挙げるとすれば、ルール設計は「性善説で書かない」ということです。
これは、AIを信用していないという意味ではありません。むしろ逆で、AIエージェントは指示された通りに忠実に動こうとするからこそ、「常識的に考えて分かるだろう」という前提を置かずに、境界線や例外までできる限り明文化しておく必要がある、ということです。人間相手なら阿吽の呼吸で伝わることも、AIエージェント相手には言語化して初めて伝わります。この「言語化する」という作業自体が、実は自分たちの業務ルールを見直す良い機会にもなっています。
次回は、コンテンツ制作部が実際に手掛けているnote事業について、企画から第1弾公開までの過程を記録します。会社の成り立ちや部署設計については、第1回・第2回の記事もあわせてご覧ください。


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